エッセイ

  • フルーツの上の蘭

    それは、クリスマスを過ぎたある年の瀬の頃だった。タイ・バンコック、シティーホテルのスイートルーム。チェックインを済ませ、自分の部屋にはいる。 ルームメイクされたばかりの部屋を最初にみるとき、いつでもわくわくする。または、がっかりすることもある。が、今回は違う。私は、一気にハイテンションとなる。部屋の設備のグレードの高さにではない。もちろんそれもさることながら決定づけたのは、ソファー横のローテーブルに置かれたプレート。その上には、フルーツと花のアレンジメント。 プレートには、2本のバナナ、二つの大きめのオレンジ、そして青いりんごが3個。それらの上にあしらわれていたのは、蘭、デンファレの花々だった。 3種のフルーツは、これといって真新しいことはない。ごく普通に日本でも簡単に手にはいる庶民の代表ともいえる果物ばかりだ。蘭の花といえば、タイの国花。デンファレも日本で年間通して身近にある花ではあるが、日本でのそれとは、色の深みがダントツに違っていた。 バナナの黄色、みかんのオレンジ色、りんごの青みがかったグリーン色、そして蘭の濃い青紫から薄紫色へのグラデーションと共に花びら中央部に群がるターコイズブルー。これらの色が白いプレート上にハーモニーをつくっている。それらは、オーケストラが生み出す音楽のようであり、華道家によりうやうやしく活けられた花々のようでもあった。 目の前にあるものに心潤された。あの一瞬を絵にしたかった。

  • カラフルミニトマト

    スーパーマーケットの野菜売り場にいくのが好きだ。最近、おしゃれな形状で美しい色をした野菜が多いためだ。 中でもミニトマト。少し前までは、赤だけだったが今は、色も形も豊富。 売り場で備え付けの器の中に好きな種類をいれて最後に会計できるバイキング形式。その十数種類程の中から時間をかけてプラスティックケースに放り込んでいく。楽しい時間だ。赤いものは、種類が特に豊富で丸型と楕円形など数種ある。ヘタの部分の形にも拘って選んでいく。その他はほぼ丸型で、黄色、レモンイエロー、オレンジ、ブラウン、グリーン、ライトグリーンなど。本日計40個購入。 帰宅後、それらを黒い布の上にごろごろと転がしてみる。 カラフルなかれらは、水を得た魚のように動き始めた。

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