Introduced to Intellectual Entertainment.
2020/8/10 知的エンターテイメントに、ご紹介して頂きました。
第21回日本・フランス現代美術世界展で、山本智子さんの作品を観てきました。
東京・六本木の国立新美術館3A・3B展示室で8月16日(日)まで開催中の、
第21回日本・フランス現代美術世界展。サロン・ドトーヌ特別協賛ということ
もあり、いかにもサロンっぽい正統派絵画も多いのですが、一方で現代センス
あふれるユニークな立体から日本の伝統に根差したものまで、幅の広い多彩な
魅力の作品群が、それも無料で楽しめるという、嬉しい企画です。
そんな中、山本さんの油彩4点は、決して声高に何かを主張することなく、
静かに会場の中心付近に展示されていました。4枚とも植物が主なモチーフで、
また一辺91cmの正方形の中央に大きな円のある構図も一貫しています。そんな
ところから声高感こそないのですが、だから作品としての存在感もないという
わけでは決してありません。
4枚のうち、左の2作品で描かれるのは紫陽花。中央の円の構図がはっきり
していて、ほとんどその円の中で完結しています。ひとことでいうなら「静的」
でしょう。少数の花びらが円の外をひらひら舞っているのも含めてです。一方、
右の2作品は、情熱的な薔薇の花弁や、味の記憶が生々しく蘇りそうな果物が
使われていることもあり、「動的」なエネルギーがほとばしっています。その
果物も、一番右の作品は葡萄でどこか「知的」なイメージ。そしてその知的さ
は、一番左の寒色に支配された作品とも共通しています。一方、右から2番目
の作品で描かれる果物は苺。こちらは色からいっても「情熱」的。そしてそれ
は左から2番目の作品の、メリハリのある色使いに通じるものがあります。
だから一番左からみていくと、まず「静的」が並び、1つずらして「情熱」
があり、また1つずらして「動的」と続き、そして次に一番右がぐるりと円環
する感じで「知的」となり、また一巡して「静的」に戻る。そんな無限ループ
の中、いつまでも鑑賞を続けたい気持ちになってくるのです。4作品とも上記
ウェブサイトの「オンラインギャラリー」で閲覧可能ですが、お盆もステイ・
トーキョーしている人は、ぜひ六本木に足を運ぶことをオススメします。